対馬未来会議
とは

About

海洋課題の集積地たる対馬の未来を考えることで、同様の課題に直面している世界中の島嶼部の課題にも同時に向き合います。
対馬市民の方々、対馬島外の企業人がそれぞれの目線を持ち合わせ、アイデアソンを中心に世界最先端のサスティナブル・アイランドの実現に向けた未来への提言をディスカッションする会議です。

主催

一般社団法人
ブルーオーシャン・
イニシアチブ

第2回のゴール

2050年までに、
対馬を世界最先端のサスティナブル・アイランドにする。
ためのアイデアを実現に一歩進めるためのロードマップ作成&事業の具体化。

日程

2024年10月4日(金)~5日(土)

場所

長崎県対馬市内 各所

概要

1日目(10/4):スタディツアー
3つのコースに分かれて、現場のリアルな状況・課題を体験し、分科会アイデアを現地の事業者に壁打ち・意見交換を行う
A:海洋プラスチックコース
B:ブルーカーボンコース
C:海業活性コース
2日目(10/5):対馬島内メンバーとの事業構想ワークショップ
1日目の気づきや島内参加者からの意見を盛り込み、アイデア実現に向けた課題や理想の体制を整理。実行に向けたロードマップを作成し、分科会の次のアクションへの糸口を探る。

レポート

Report

2024年10月4日(金)、10月5日(土)にブルーオーシャン・イニシアチブ(以下、BOI)は、第2回となる対馬未来会議2024を長崎県対馬市で開催しました。
この対馬未来会議は「2050年までに対馬を世界最先端のサスティナブル・アイランドにする」を目標に年に1回行っています。
本イベントには、BOIコミュニティメンバーの企業や、海洋に関する様々な分野で活動する有識者の方、対馬島内で日々環境や海の課題に向き合っている方々など、総勢80名を超える皆様にご参加いただきました。
1日目は、関心のあるテーマに分かれたスタディツアー、2日目には対馬市民の方々にもご参加いただいた事業構想ワークショップを行い、「2050年までに対馬を世界最先端のサスティナブル・アイランドにする」アイデアを実現に一歩進めるため事業の具体化について参加者間で議論しました。 本イベントを通じて、「妄想を構想に」すべく、少しでもより良い方向に変えていくために始められる具体的なアクションを起こす意気込みと、企業/団体間の連携を醸成することができました。

1日目 10/4 Fri.

社会課題見学ツアー

初日は、対馬が抱える課題を参加者へインプットすることに重きを置き、島内有識者の講演や島内視察を実施しました。
今年はテーマ別に3つのツアーが用意され、参加者が3つのグループに分かれて各ツアーに参加しました。

A. 海洋プラスチックコース

対馬は、日本海の入口に位置し、美しい海岸線を有していますが、大陸からの海流や対馬海流の影響と、リアス式海岸の地形ゆえに、大量の国内外の海洋プラスチックごみが漂着しています。その漂着している現場のひとつと、漂着した海洋プラスチックごみを処理する施設を視察しました。

海岸で海洋プラスチックごみの惨状
対馬の歴史と地形への理解

対馬島の、南の下島と北の上島を繋ぐ要所にある浅茅湾。その湾に日露戦争時に運河の開通により作られた万関瀬戸と、その上を渡る万関橋から流麗なリアス式海岸を見学しました。海と山がとても近く、その入り組んだ地形には大量の海洋プラスチックごみが漂着している現状を説明いただきました。

万関橋と海岸線を見学
海洋プラスチックごみ漂着の現状

リアス式海岸の入り組んだ地形のなか、赤島という、島の西側にある海岸があります。
赤島には大量の海洋プラスチックごみが漂着しており、手で抱えきれないほどの発泡スチロールもありますが、マイクロプラスチックが堆積しており、足元がスポンジのような海岸になっていることを体感し、課題の深刻さを実感しました。
また、一般社団法人対馬CAPPAに漂着の現状をご説明いただきながら、参加者15名で1時間弱ほど回収作業を行い、軽トラック2台以上のプラスチックごみを収集しました。

赤島海岸にて大量の海洋プラスチックごみを回収
海洋プラスチックごみ再資源化への課題

続いて、回収された海洋プラスチックごみが集められる対馬クリーンセンタ中部中継所を対馬市様のご説明のもと、視察しました。こちらでは、対馬市全域で回収された海洋プラスチックごみを、選別、洗浄し、再生可能なものは加工できる状態にしたうえでチップ化などの処理をしています。
海岸で汚れが付着したゴミの再資源化が難しいなか、製品化しやすいインゴット加工の機械の導入など、対馬市の挑戦を続ける姿勢を強く感じました。

対馬クリーンセンターにて、海洋プラスチックごみの選別や処理を見学
B. ブルーカーボンコース

ブルーカーボンコースでは、磯焼け、藻場の再生、養殖・種苗開発など対馬の漁業・水産関連の現状について各訪問先で見学・意見交換などを行いました。

有限会社丸徳水産にて、食害魚について説明をうける参加者
食害魚・害獣と、海・山の課題

有限会社丸徳水産にて、磯焼けの原因の一つである食害魚についての説明や実際の磯焼け現場の視察、一般社団法人daidaiにて、山の荒廃の現状と海の関係や、害獣の食肉・加工についてご説明いただきました。
海と山のどちらの問題も解決を急がなければいけいない現状と、解決方法の1つとして食害魚・害獣を活用したビジネスに取り組む方々の切実な意見を伺うことができました。

一般社団法人daidaiにて、ジビエの加工現場の見学
磯焼け現場の視察
養殖と藻場再生の現状

公益財団法人 対馬栽培漁業振興公社にて、岩ガキの幼生の生産やアワビやウニなどの養殖の様子、対馬での藻場再生の取り組みについて住友大阪セメント株式会社にご説明いただきました。
さらに、海水温の上昇がもたらす種苗への影響について実際の被害状況を見学し、また一つ対馬が抱える問題について、実感することができました。

公益財団法人 対馬栽培漁業振興公社にて、岩ガキの幼生を見学
着脱式藻場増殖プレート
ひじき漁の現状

鴨居瀬地区藻場保全組織にて、ひじき漁の現状と再生活動についてご説明いただきました。
食害魚によるひじきの陸揚量の激減、海という環境や地形などによる養殖の難しさなど現場での生々しい具体的な課題を実感しました。

ひじき漁の現状についてご説明される、鴨居瀬地区藻場保全組織の築城茂徳氏
C. 海洋活性コース

海業活性コースでは、漁協や水産会社の方々にトレーサビリティや養殖などの課題についてのヒアリング、実際に船で移動しながら漁協にある遊休施設の見学や水中ドローンの体験など、海上で多くの時間を過ごしました。

複数の船に別れて移動する参加者
輸出への取組と、対馬の地形への理解

2つのグループに別れ、一方は、対馬水産株式会社にてHACCPに基づく衛生管理や輸出への取組をご説明いただきました。もう一方は万関橋の見学を行い、万関瀬戸と呼ばれる運河を橋の上から眺め、対馬の歴史や豊かな自然に触れました。

万関橋と海岸線を見学
漁協の遊休施設についてのヒアリング・見学

遊休施設の紹介とともに、漁協や地域の課題、地域全体の意思決定プロセスの重要性についてご説明をいただきました。
また、有限会社丸徳水産から、ゲストハウスとして利用予定の遊休施設について、事業化へのプロセスや体験談をお聞きし、見学をしました。

ゲストハウスとして利用予定の犬吠出張所を見学
養殖の現場と、水中ドローンの体験

海上を船で移動し、有限会社丸得水産の生け簀にて、養殖が直面する課題や環境問題についてご説明いただきました。
また、生簀の中で、一般社団法人マリンハビタット壱岐のサポートのもと、水中ドローンの操作を体験し、簡単に楽しく操作しながら、モニターに映し出される水中の魚の生き生きとした近影に、海を感じるツールとしての可能性を体感しました。
一般社団法人マリンハビタット壱岐のサポートで、初心者でも比較的簡単に楽しく操作でき、モニターに映しだされる水中の魚の様子に一同驚きました。

サバの生簀で水中ドローンの操作体験

2日目 10/5 Sat.

事業構築ロードマップディスカッション

2日目早朝より、対馬市民の方々も参加いただきアイデアソンを行い、事業構想アイデアと立ちはだかる課題、社会的なインパクトについて議論しました。

ご挨拶

まず初めに、アイデアソンの開会宣言として、代島裕世 BOI代表理事と、比田勝尚喜 対馬市長より、開会のご挨拶をいただきました。代島代表理事からはアイデアソンへの大きな期待、市長からは対馬市と日本の未来へとつながる企画への期待をお話しいただきました。

一般社団法人 ブルーオーシャン・イニシアチブ 代表理事 代島裕世
対馬市長 比田勝尚喜 様
この1年のBOIの活動

アイデアソンの開催に先立ち、参加者に向けて、BOIのこの1年の活動について、小宮信彦理事(事業構想大学院大学 特任教授/株式会社電通 シニア・イノベーション・ディレクター)より、参加者の皆様にご報告を行いました。

グループワーク

グループワークでは、対馬滞在期間中に得られた様々な気づきをベースに、8つのワークセッショングループに分かれ、それぞれのグループがテーマにしている課題について「アイデアを実現に一歩進めるためのロードマップ作成&事業の具体化」ためのアイデアを検討しました。
各グループには、対馬市民の方にもご参加いただき、課題について、事業構想アイデアと立ちはだかる課題、社会的なインパクトについて議論しました。

各グループワークでの議論の様子
全体に向けた発表

アイデアソンの最後に、各グループで議論された内容の発表を全体に向けて行いました。BOI会員の方は対馬で体験し感じたこと、対馬市民の方は普段から向き合っている課題をベースに、参加者がもつ知見とアイデアを絡め、昨年の対馬未来会議より、さらに1歩踏み込んだ具体的な事業モデル案など様々なビジネスアイデアが発表されました。

発表の様子
各グループの発表内容を見学する参加者
最後は参加者全員で記念撮影

2日間にわたって開催された対馬未来会議2024を通じて、現在とこれからの対馬が抱える課題を起点としつつ、世界最先端のサスティナブル・アイランドの実現に向けた様々なアイデアが生まれました。
対馬の地理や、交流の歴史をバックボーンとしたオープンイノベーションの気質は、島内外の連携を深め、次のアクションへと繋がる一歩となることを強く感じました。この思いを実行に移し、海洋課題解決に向けて引き続き取り組んでいきたいと思います。

今回得られた具体的なアイデアは、今後、BOI分科会を通じて、実現に向けた検討を進めてまいります。

ロート製薬株式会社
広報・CSV推進部

南 修二 様

海洋プラスチックの回収を体験させていただき、想像していたよりも堆積している量にショックを受け、自分たちの無力感にすごく苛まれました。
弊社はプラスチックを使用した商品を取り扱っておりますので、もっと意識をしていく、社内の価値観も変えていかなければいけないと思いました。
ぜひ一度みなさん対馬に来ていただきたいです。見聞きしていた印象と、実際に体験したものは全く違っていました。また対馬に来ます。

レンゴー株式会社
研究開発・環境経営推進部門

吉田 香央里 様

海の課題だけではなく、同時に山の課題の解決も急務だということを体感できたことが、一番の収穫です。
当社では、海の中でも土の中でも生分解する木材由来のセルロース素材を取り扱っています。これらを活用して対馬の課題にアプローチしていきたいと感じました。
この対馬でしっかりと課題解決に取り組み、その成果を日本全国にも広げていけるようなアクションができたらと思っています。

アビームコンサルティング株式会社
執行役員

橘 知志 様

体験型の学びは、実体感を持って課題に取り組めるようになり、非常にいい形のプログラムでした。
皆さんと会話するときも、同じ目線で会話できるようになる。言葉が合うんですよね。下地の学びがあった上でできるので、議論が非常にスムーズでした。
海洋問題は、経済価値に持っていかないとだめだと思っています。今回その困難さが身をもってわかり、例えば流通構造の改革など、今の産業構造を紐解きながら解決していくという目線が必要だと、実体験として感じました。
もっと様々な企業、例えば化学素材メーカーや流通小売企業などにも、取り組みに参加してもらえるような活動を個人的にはしていきたいと思いました。

アスクル株式会社
コーポレート本部

四夷 麻子 様

弊社は対馬市とSDGs連携協定を締結しており、その中でいろいろな企業様と共創することが必要だという実感しており、そこで去年の対馬未来会議のアウトプットを拝見して、様々なアイデアが生まれたことに大変感激し、今回参加させていただきました。
こういった活動は、個人レベルでは効果がわからないことが多いと思うので、企業としても消費者の皆さまと一緒にできるような仕掛けを検討できればと思っています。

一般社団法人 対馬CAPPA

末永 道尚 様

海岸清掃と視察の説明をさせていただきました。皆さん、非常に真剣に取り組んでいただけた事が嬉しく思います。
今後は企業や研究機関などいろいろな方々とも連携を行い、対馬モデルの一つとして、世界的に発信をしていけるよう、これから先も、永続的に続けていただければと考えております。