身近な衛生製品へと活かす
ディスペンサー開発
回収された海洋プラスチックを
「使える資源」として社会へつなぎ
海洋ごみ問題への関心を広げる
長崎県対馬市の海岸で回収された海洋プラスチックを原料の一部に配合した、手動ディスペンサー「MD-300-OP」シリーズ。2026年2月27日、手洗い石けん用・手指消毒用・便座クリーナー用の3種類を発売しました。
海洋プラスチックを資源として活用し、日常的に使用される衛生製品へと生まれ変わらせることで、海洋ごみ問題をより身近に感じてもらうことを目指しています。
サラヤ株式会社の製品開発・製造、アスクル株式会社の販売チャネルや顧客接点、株式会社ごみの学校の海洋プラスチック活用に関する知見を掛け合わせ、海洋プラスチックを「使える資源」として循環させる新たなモデルづくりに挑戦しています。
OUR CHALLENGES
解決したい課題
年間3万立方メートルを超える
漂着ごみが押し寄せる対馬
海洋ごみ問題をもっと身近に
長崎県対馬市は、地形や潮流の影響により、年間3万立方メートルを超える漂着ごみが流れ着く、国際的な海洋ごみのホットスポットです。しかし、回収できるのはその約4分の1にとどまり、再資源化できるものも限られています。回収されたごみの多くは焼却や埋め立て処理に頼らざるを得ないのが現状です。また、海洋ごみの多くは陸上で排出されたごみが川や海を通じて流れ着いたものであり、私たち一人ひとりの暮らしとも深く関わる課題です。だからこそ、回収した海洋プラスチックを身近な製品として活用し、海洋ごみ問題を自分ごととして考えるきっかけを生み出そうと、このプロジェクトが始まりました。
PROGRESS OF THE PROJECT
プロジェクトの進捗
メーカー・流通・資源循環
3社の知見が結集し
商品開発が動き出す
サラヤ株式会社、アスクル株式会社、株式会社ごみの学校は、海洋プラスチックを「使える資源」として社会に循環させたいという想いのもと、異なる立場で取り組みを続けてきました。BOIでの対話をきっかけに、その想いが重なり、サラヤの製品開発力、アスクルの再生素材活用や流通の知見、ごみの学校が培ってきた原料メーカーや成形メーカーとのネットワークが融合。それぞれの強みを持ち寄ることで、一社だけでは実現が難しかった海洋プラスチックを活用した商品開発が、本格的に動き始めました。
海洋プラスチックを
安心して使える製品へ
試作と検証を重ねる
商品化に向けて検討されたのは、海洋プラスチックをどの製品に、どのような形で取り入れるかという点でした。薬液が直接触れるボトル容器では、内容物との相性や溶出リスクなど、安全性や品質面で慎重な検証が必要なため、まずは手動ディスペンサーのカバー部分に配合。通常の素材とは異なる物性を見極めるため、新商品開発と同等レベルの試験を重ねました。色味についても検討を重ね、空間になじむグレーをベースに、海を想起させるブルーの粒を配合。製品ごとに異なる表情を生むデザインへと仕上げました。
製品を「使う」ことで
海洋ごみ問題を考える
新たな接点を広げていく
販売開始後は、アスクルでの先行販売を通じて、活用の場を広げています(2026年12月よりサラヤ株式会社でも発売予定)。また対馬市での展示・活用に加え、東京で開催された「いい明日がくる展」でも紹介。さらに2026年6月にオープンした佐賀県の世界海洋プラスチックプランニングセンター(プラプラ)のトイレに設置されるなど、導入事例も少しずつ増えてきています。今後はホテルや教育機関など、環境課題への関心が高い現場への展開も視野に入れながら、「使うこと」が海洋ごみ問題を考えるきっかけとなるよう、活用の場を広げていきます。
INTERVIEW
インタビュー
海洋プラスチックを使うことが
特別なニュースではなくなる社会へ
目指すのは、ごみが海へ流れ出ない未来
「BOIでの交流が、このプロジェクトの出発点でした。アスクルさんとは以前からお取引はありましたが、分科会や交流会を通じて互いの環境への取り組みや課題意識を共有する中で、『一緒に海洋プラスチックを活用した商品をつくれないか』という話が自然と生まれました」。そう話すのは、サラヤ株式会社の深澤さん。株式会社ごみの学校とは情報交換や工場見学を通じて交流を深め、海洋プラスチックの成形ノウハウや原料メーカーの紹介など、これまで培ってきた知見を共有してもらうことで、3社による共創がスタートしました。目指す方向性を共有できていたからこそ、企業の枠を超えたスピーディーな意思決定と商品開発につながったと振り返ります。
開発では、海洋プラスチックを配合することで樹脂の特性が変化するため、新商品と同等レベルの耐久試験や品質確認を実施。デザイン面で大切にしたのは、環境配慮を前面に押し出しすぎないことでした。「日常的に使うものだからこそ、空間になじみ、自然に使ってもらえることを意識しました」と深澤さん。ブルーの粒を生かした落ち着いたデザインにも、その考え方が表れています。
3社が共通して語るのは、「商品をつくること」が目的ではないということです。アスクル株式会社の山名さんは、「この商品を通じて海洋プラスチック問題を知ってもらい、『自分にもできることがある』と考えるきっかけになればと思っています。海の問題は遠い場所の出来事ではなく、私たちの日常ともつながっています」と話します。また、株式会社ごみの学校の東野さんは、「海洋プラスチックを『使える資源』として社会に定着させたいと思っています。身近な店舗や日用品の中でも海洋プラスチックを使った製品が当たり前に並ぶようになれば、その価値はさらに高まり、回収や分別、再資源化までを含めた循環の仕組みも持続可能なものへと変わっていくはずです」と展望を語ります。
その先に3社が目指すのは、海へ流れ出るごみそのものを減らすことです。対馬に漂着した海洋プラスチックは、それぞれの知見と技術が重なることで、新たな価値を持つ製品へと生まれ変わりました。今回の商品開発は、海洋プラスチックを「使える資源」として循環させる可能性を示すとともに、海洋ごみ問題を社会全体で考え、行動につなげる新たな一歩となっています。

サラヤ株式会社
商品開発部 サステナブルデザイン開発センターID課 担当課長
深澤 恒正
アスクル株式会社
リテール商品本部 リテール事業推進 ブランドエシカル戦略推進
山名 洋和
株式会社ごみの学校
副代表
東野 陽介
MEMBER
メンバー
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