対馬が抱える海洋問題を
自らの目でリアルに実感
〜海と島の未来を切り拓く人々の挑戦〜
対馬スタディツアー
【実施概要】
●日時:2025年12月20日(土)11:00~21:00
●開催場所:長崎県対馬市内各所
●参加人数:会場参加者29名
フィールドワークレポート

対馬未来フォーラム前日には、バスで島内を巡りながら、対馬が抱える海洋問題や自然環境、文化的背景を学ぶフィールドワークを実施しました。
インタープリターを務めたのは、株式会社ブルーオーシャン対馬 代表取締役・川口幹子様。ツアー冒頭では、一般社団法人ブルーオーシャン・イニシアチブを代表して、代表理事を務める代島裕世より挨拶を行いました。

対馬の地形概観@万関展望所
国境の島・対馬ならではの地形や海流の特徴について解説を受け、なぜ対馬に大量の漂着プラスチックごみが集まるのか、その背景を俯瞰的に学びました。
対馬は日本海と東シナ海の間に位置し、複雑な海流の影響を受けやすい地理的条件にあります。加えて、細長い島の形状や入り組んだ海岸線が、島外から流れ着いたごみを滞留させやすい構造になっていることが説明されました。
現場を巡る前に、地形や海流について学ぶことで、漂着プラスチックごみの問題を「回収すれば解決するもの」としてではなく、対馬の立地そのものと深く結びついた課題として捉え直すきっかけとなりました。


お弁当&伝承ツアーイントロ@女護岸島ふれあいプラザ
昼食には、有限会社丸徳水産と一般社団法人daidaiが連携し、対馬が抱える課題と向き合う食材を活用したお弁当を提供しました。
藻場を食い荒らす食害魚の「イスズミ」や、山の荒廃や農業被害の原因となっている「害獣(イノシシ)」など、通常は厄介者とされがちな存在を、資源として捉え直す取り組みが盛り込まれたメニュー。
食を通じて、海と山の課題が決して切り離されたものではなく、循環の中で連なった一つの問題であること、暮らしと密接につながっていることを体感する導入となりました。






持続可能な海と山を繋ぐ伝承ツアー
続いて、有限会社丸徳水産では、磯焼けの原因の一つとされる食害魚についての説明を受けるとともに、実際に磯焼けが進行している現場を視察しました。海藻が失われていく現状と、それが漁業や生態系に与える影響について、現場ならではのリアルな声が共有されました。
また、一般社団法人daidaiでは、山の荒廃が海へと影響を及ぼす関係性や、増え続ける害獣の現状、さらにはそれらを食肉として加工・活用する取り組みについて説明いただきました。
海と山、双方の課題が深刻化する中で、それらを決して個別の問題として解決するのではなく、深く関わり合う課題と捉えて共に解決していかなければならない。そんな想いを胸に抱き、連携しながら挑戦する方々の切実な思いが伝わってきます。
さらに、有限会社丸徳水産から、遊休施設をゲストハウスとして活用している事例「GYOSON Inn 犬吠」について、事業化に至るまでのプロセスや実体験を共有いただき、実際に施設を見学。漁業・水産加工にとどまらず、海業の視点も踏まえた6次産業化に取り組む丸徳水産の姿勢を通じて、地域資源を活かしながら、新たな価値を生み出す具体的な取り組みを学ぶ時間となりました。



海岸視察@クジカ浜
伝承ツアーで海と山の課題を学んだ後、参加者は実際に海岸へ足を運び、対馬を象徴する漂着プラスチックごみの現場であるクジカ浜を視察しました。
一般社団法人対馬CAPPAの案内のもと海岸を訪れると、写真や映像では把握しきれないほど膨大で広範囲に及ぶ漂着ごみを目の当たりに。発泡スチロールやプラスチック片は、浜辺だけでなく、風に流されて山の斜面や草木の間にまで入り込み、一部は土に埋もれて地層の一部となっていました。
「回収する」という行為だけでは追いつかない現状を、参加者一人ひとりが実感し、島内の努力だけでは簡単には解決できない現実があることも、改めて突きつけられました。
その一方で、地域の方々が長年にわたり向き合い続けてきた現場であるからこそ、解決策を考える起点として、この場所を訪れる意味の大きさも感じられます。 食害魚や害獣の活用といった「資源として捉え直す」視点を学んだ後に現場を見ることで、海岸に広がるごみの一つひとつが、次の行動や事業、連携へとつながる課題であることを、参加者全員が共有する機会となりました。

対馬の海神信仰@和多都美神社
最後に訪れた和多都美神社では、海とともに生きてきた対馬の信仰文化に触れました。潮の満ち引きとともに景色が変わる境内は、自然と人の営みが長い時間をかけて共存してきたことを静かに物語っています。
自然を畏れ、敬い、恵みとして受け取りながら暮らしてきた価値観は、環境を「守るべき対象」として捉えるだけでなく、「ともに生きる存在」として向き合う姿勢の大切さを教えてくれました。
海洋環境の課題を現場で学んできた一日の締めくくりとして、現代の環境問題を考える上でも、多くの示唆を与えてくれる時間となりました。
参加企業コメント

サラヤ株式会社 更家一徳様
これまで写真や映像を通して対馬の海洋プラスチックごみ問題を知っているつもりでいましたが、実際に現地を訪れ、「百聞は一見にしかず」という言葉のとおり、現状を自分の目で見て体感することの意義を改めて感じました。クジカ浜で目にした光景は、今も強く印象に残っています。対馬では、海洋プラスチックごみ問題に対して真摯に取り組まれている方々の努力を実感する一方で、取り組みの継続や広がりという点では、まだ課題もあると感じました。今回のスタディツアーを通じて得た学びを、未来につなげていくための橋渡し役として、私たち企業も果たすべき役割を考え、行動していきたいと思います。

レンゴー株式会社 石井一志様
これまで対馬には4回ほど訪れたことがありますが、クジカ浜には初めて行きました。写真では海洋ごみの中に発泡スチロールが見当たらなかったため、現在行っている取り組みとのつながりを強く意識していませんでした。しかし、実際にクジカ浜を訪れた際に、風で山の上まで吹き上げられ、土に埋まり地層の一部となっている発泡スチロールを目の当たりにし、強い衝撃を受けました。現状をすぐに変えることの難しさを感じつつも、ごみのない将来を見据えた取り組みを今後も継続していきたいと考えています。あわせて、BOI会員の皆さまとも、より密に連携を図っていきたいと思います。

株式会社ダイフク 髙木皓平様
今回で2回目の参加となりましたが、現場の実情を自分の目で見ることができた点は、とても大きな学びでした。「何とかしよう」という強い思いを持って取り組まれている方々の熱量に触れることで、「自分たちも何かしなければならない」という気持ちがより強くなりました。弊社で行う取り組みは、海に出る前にごみを回収し調査することが中心ですが、根本的な解決のためにはごみの排出量を減らしていく必要があると感じています。一方で、担い手の高齢化や人口減少といった課題も深刻だと感じました。だからこそ、私たちの世代が今できることに取り組み、仕組みづくりを通じて根本的な解決につなげていきたいと考えています。

TerraCycle Japan合同会社 吉野久子様
対馬の海ごみ由来のリサイクル資源を扱うなかで、正直なところ、現場を十分に知らないまま伝えてきたのではないかというもどかしさもあり、今回のスタディツアーに参加しました。島民の方々が、島の内と外、暮らし全体のことを考えながら日々海洋プラスチックごみ問題に向き合っている姿に強く心を打たれました。海岸に流れ着いた大量の海ごみは、そもそも回収が困難であり、現地からは「焼却や燃料化するしかない」という悲痛な叫びも聞かれました。その現実に触れ、問題の複雑さと虚しさを強く感じました。一方で、獣害対策で使われている道具が、海洋プラスチック由来の素材に置き換えられないか、というニーズを伺うこともでき、私たちにできる取り組みを考えるきっかけになりました。

株式会社日本政策投資銀行 四国支店 伊藤大輝様
私たちは、海業の復興や産業創成を地方創生につながる重要な経営課題と捉え、金融機関としての関わり方を模索してきました。ただ、現場を知らずに議論を進めることには限界があるとも感じており、今回のスタディツアーへの参加を決心。実際に対馬を訪れ、資料や写真だけでは捉えきれなかった課題の深さと広がりを実感しました。同時に、金融機関単独では解決できないことが多いため、BOI会員の皆さまがそれぞれの強みを持ち寄り、連携していくことの重要性を改めて認識しました。今後も人と人をつなぐ役割を担いながら、共創による事業づくりに貢献していきたいと考えています。


BLUE NIGHT TSUSHIMA@志まもと
スタディツアーの締めくくりとして、対馬市の皆さまとBOI会員企業による懇親会「BLUE NIGHT TSUSHIMA」を開催しました。
会場では、対馬市市長 比田勝尚喜様からの歓迎のご挨拶に続き、BOI代表理事 代島裕世による乾杯の音頭をもとに、会食を開始。ツアーで見て、聞いて、感じたことを共有しながら、参加者同士、そして対馬の皆さまとの対話が自然と生まれ、立場や分野を超えた交流が広がっていきました。 海洋問題や地域課題について、課題意識だけでなく、それぞれの立場からの考えや可能性を率直に語り合う、有意義な時間となりました。
最後に
今回の対馬スタディツアーは、対馬が抱える海洋問題や地域課題を、現場で体感し、参加者同士や地域の方々との対話を通じて、次の行動につなげることを目的に実施。フィールドワークを通して、資料や情報だけでは捉えきれない現実に向き合い、多くの気づきと共感が生まれる機会となりました。
参加者からは、海洋ごみ問題をはじめとする課題を「自分ごと」として捉える重要性や、企業や立場の枠を超えて連携することの必要性を実感したという声が多く聞かれると共に、議論は、現場で見た課題をどのように行動や事業につなげていくかへと広がり、共創による解決の可能性が共有されました。
BOIでは今後も、対馬をはじめとする地域をフィールドに、産学官民が連携しながら、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めてまいります。
BOIコミュニティへの参加にご興味、ご関心をお持ちの企業/団体様がいらっしゃいましたら、是非BOI事務局までご連絡いただけますと幸いです。
info@blueocean-initiative.or.jp
皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。